Enjoy a party!



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それは邂逅でなく。/トヲコ
美しい満月、煌びやかな星。
それらが照らし出すのは富士の山。
その景色は此処が普段人一人いない寂しい島である事を忘れさせる。

「そういやよ、お前ついこの間、誕生日だったんだな。」

「…。」

「そんな不思議そうな顔するなよ。昼間“追っかけ”の女子共が騒いでたから偶々知ったんだよ。」

「…そうか。…最後の誕生日……かもしれぬ。」

「目出度い日だってぇのに、相変わらずだなぁ右京。」

「覇王丸には…明日をも知れぬ身の者の気など…分かるまい。」

「ああ、病の辛さは分かんねぇな。」

覇王丸はあっさりとそう答え、酒瓶を口に運ぶ。
ゴクリと酒を飲み込むと笑顔で話を続けた。

「けどよ、俺とて剣に生きる身。明日ブッ刺されてくたばるかも知れねぇ。だからよ、そう変わらねぇと思うぜ?」

「…覇王丸はそう簡単に…斃されまい。」

「ははっ、その言葉そのまま返すぜ。」

すると、覇王丸はどこからか出した紅い盃を右京に差し出した。

「明日をも知れぬ何たらってやつならよ、美味い酒の味は体に染み込ませておくのが得ってモンよ。」

言うと、覇王丸は半ば強引に右京に盃を手渡し、酒を注いだ。

「お前は幾度剣を交えても俺が斃せない男だ。病なんかでポックリ逝くタマじゃねぇよ。な?」

「相変わらずだな…覇王丸。」

右京は小さく微笑むと、盃の酒を口に運んだ。
病になってからというもの滅多に酒など飲む事がなくなったその身体は、只の一口で火照るのを感じた。

盃を口元から離したとき、夜空に花火が打ち上がった。
それはいつの頃からか彼岸の時期に打ち上がるようになり、富士の空を彩っていた。

「そうそう!目出度い日くらいもっと笑えよ、右京。」

そう言って覇王丸は盃に酒を足した。

「ところでお圭さんとは、どうなんだい?」

「…。」

「笑ってた方が、お圭さんも喜んでくれるだろ?」

「…。」

右京は酒を一気に飲み干した。

「ったく、本当に勿体無いヤローだねえ、右京は。」

「…うるさい。」

「ま、次は進展したって話を期待してるぜ。」

「…。」

二人を照らすように花火は未だ打ち上がっている。
それは遥か遠くの筈であるが、ドンドンと体に音が響く。

「そういや俺も今月、誕生日だったんだぜ。」

「そうか…。」

「こいつぁ丁度いい、祝いの花火だな。花火を肴に飲む酒は格別に美味いねぇ!」

「…。」

「次の花火が上がる頃に、また此処で剣を交えようぜ。」

「…ああ。」

「それまで互いにくたばらねぇよう精進しねぇとな。何て話し振っておいて右京に斃されちゃ笑い者だけどよ。」

「…フッ。」

「なんだよ、笑うなよ。」

「…笑えと…言っただろ?」

「ちっ、こりゃ暫く死にそうにねぇな。」


そう言って、二人はまた笑った。


             ―終―


【コメント】
20周年&誕生日おめでとう!

次にうpしてる絵のイメージで文章を書いたらこうなりました。
いつも寡黙な右京さんですが、覇王丸といるときは多少口数が増えてたらいいなぁ。
初代ステージで祝い酒…ということで、誰かの計らいでいつもより花火が多めに打ち上がっております。
対照的ながらも仲の良さそうな2人が大好きです!

  

※主催本人のため御礼コメントはありません
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